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イオン移動度分光法(IMS)を用いる分析装置の価格について

空港の保安検査場では、違法薬物や爆発物検知の需要が非常に高く、各国の政府は様々な装置を導入してきました。

これらの目的で運用される装置の中で三種の神器というべきものが、①X線撮影装置(XP)、②イオンモビリティ式違法薬物・爆発物検査装置、③金属探知機です。

このうち、X線撮影装置(XP)に関しては、電池や液体の取り出しが検査場のスループットを低下させるため、フラットパネルディテクタ技術の革新とともに、2種の管電圧の線源を用いた原子番号解析機能付きX線CT(取り出し不要)への置換が進んでいます。

また、金属探知機は、ミリ波ボディスキャナが登場しました。もっとも、ミリ波ボディスキャナは「係員の目に体型が曝される」などとしてプライバシー侵害であるといった問題提起も盛んであり、市場規模は広がりませんでした。

さて、イオンモビリティはどうでしょう。この装置は、テロとの戦いを契機に技術革新が進み、保安検査業界で最も成功した分野といえます。千葉県の空港の改札前にも置いてあるあの青くて小さな箱です。

海外の空港では、ターミナルの入口で10人や20人ごとのグループに分けられ、係員が手荷物や衣服を紙で拭いこの装置で検査するという方式もありますが、とにかく操作が容易で高感度という特徴があります。

価格はどうでしょう?英国Smiths Detection社のIONSCAN 600の調達情報を確認してみると「令和6年度不正薬物・爆発物探知装置の調達二式」が約8,228万円で落札されていることから、ユニットコストは4,000万円程度とみられます。日立ハイテク製の同等品も8式の調達で1式あたり4,000万円程度であり、メーカーごとの差は小さいようです。コミックマーケットの会場で保安検査ごっこをするには少し高い気がします。

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ベラルーシ共和国における邦人拘束事案と海外渡航安全について

報道各社および外務省からの情報によれば、2024年12月1日、ベラルーシ共和国南東部のホメリ州にて鉄道写真を撮影していた男性が、スパイ行為の容疑で現地の警察に拘束され、その後КГБ(Комитет государственной безопасности *¹、ベラルーシの情報当局)に逮捕されたとのことです。

ホメリ州においては、2024年9月にも邦人の日本語教師がスパイ容疑で逮捕されています。なお、ホメリ州はロシア連邦による武力侵攻を受けて戦争状態にあるウクライナと国境を接しています。

ベラルーシ共和国とウクライナの関係は、直接の交戦がないとはいえ、ベラルーシ共和国がロシア連邦に対して兵站(ロジスティクス)面で支援をしていることから、敵対関係にあると評価することができます。

このような中で渡航を決断することの危険性は周知のことと思われますが、鉄道・港湾施設・空港施設などのインフラ施設の写真撮影自体が極めて危険であるという点には留意すべきです。

当社においては、東欧地域に設置されたデータセンタ施設の安全性評価のため各種情報を収集しているところですが、ベラルーシ共和国の鉄道系労働組合にあたるСЖБ(Сообщество железнодорожников Беларуси、ベラルーシ鉄道労働者組合)のウェブサイトに掲載された事案の概要における記述には特に注目しています。

что так называемая «охота на ведьм», начатая на БЖД более 4 лет назад, не прекращалась ни на минут и продолжается по настоящее время. В подтверждение этому может служить сулимая руководством БЖД награда «за голову» выявленного гипотетического «шпиона» или «диверсанта».

すなわち、スパイ行為を通報した列車の運転士の動機は「小遣い稼ぎ」のためだという主張です。СЖБが反体制派の労働組合であることには留意が必要ですが、旧ソ連の地域においてはさほど珍しいケースではありません。

このようなトラブルがしばしば発生する地域としては、ベラルーシのほか、ロシア連邦、カザフスタン共和国、クルグズスタン(キルギス共和国)およびラトビア共和国が挙げられます。

ラトビア共和国は、現在では西側諸国とされていますが、ロシア連邦による侵略を現実の脅威として認識しており、鉄道写真の撮影が規制されています。欧米人やアジア人であっても逮捕されるケースは多いとされています。

他方、東側諸国や旧東側諸国でも、中華人民共和国、ベトナム社会主義共和国、ラオス人民民主共和国、モンゴル国やウズベキスタン共和国では鉄道写真の撮影からトラブルに発展することは稀であるとの認識を有しています。

政情不安の地域に渡航する際、ましてやインフラ施設を撮影する際には、こうした状況をよく認識したうえで、自らがСпионの嫌疑を晴らすだけの言語能力を有しているか確認するべきでしょう。0でなければ100だというのが旧ソ連の常識です。

*¹ ベラルーシ語ではКДБ(Камітэт дзяржаўнай бяспекі)